『狩久全集』の造本と出版記念パーティ

『狩久全集全6巻+1巻』(皆進社)出版記念パーティに行ってきた。思ったとおりに本ができていて安心した。


凾には杉本一文さんの銅版画を、原画の特質を損なわないように原寸大で取り込んで、半分だけ見えるようにレイアウトし、函から本を引き出す途中で、カバーに印刷された残りの半分と結びつき絵が完成するように仕掛けた。このアイディアを実行したくてクライアントにお願いし、予定にはなかったカバーを付けてもらうことにした。そのために、最初に予定していた豪華な表紙がかくれて仕舞ったが、「それも粋でいいね」ということで承諾してくれた。(函入りの本そのものが少なくなっただけではなく、今回採用した貼り箱という函はもう書店の店頭では殆ど見られなくなり、技術者も少なくなったと言われる。)


本体表紙は製本ではあまり使われることのない、ウーペケネスというスウェードのような手触りのいい紙を用い、継ぎ表紙という背と平の部分の素材を変えてつなぐ最近では見られなくなった手間のかかる製本を採用。背には、タイトルを金箔押しをした。


本文は糸縢り綴じというこれも最近では殆ど見られなくなったとじ方を採用(ちなみに店頭で販売される単行本は90パーセント以上が網代綴じという糊で綴じる製本が採用されている)。と今までやってみたいと思ってはいたが、商業出版物ではなかなか出来ないことをたくさんやらせていただけたことに感謝。


 函には紙の素材感を残すようにニス引き加工を施したが、カバーにはすべりが良くなりこすれて破損するのを防ぐためにPP加工を施した。これで本の出し入れがスムーズになり、仕舞う時には作りの良い引き出しのように箱の中に空気が圧縮されて最後にストンと落ち着くように仕上がっていた。


一見瀟洒に見える造本だが贅沢の極みを尽くしたわかる人にだけ分かるようなつくりを心がけました。などなど私のこれまで経験してきた造本知識を全て投入させていただいた。