添い寝したいほど好きな本、宇野亜喜良:装幀『愛奴の系譜』

【捨てられない本】私が就職した頃、多くのデザイナーはイラストも描いていた方が多かった。そんなイラストと装丁を一人でこなしたこの本には、装丁を生業とするようになってから一番刺戟を受けた。宇野亜喜良:装幀、栗田勇愛奴の系譜』(双葉社、1968年)。

宇野亜喜良:装幀、栗田勇愛奴の系譜』(双葉社、1968年)函と口絵


宇野亜喜良:装幀、栗田勇愛奴の系譜』(双葉社、1968年)函裏


宇野亜喜良:装幀、栗田勇愛奴の系譜』(双葉社、1968年)表紙


ずっと本棚に立て掛けて眺めていた大好きな装丁で、添い寝してまで一緒にいたい「添い寝本」だ。装丁家デビューした頃は宇野さんを目指して、自分で描いた挿絵を使って装丁をしていたほどにリスペクトしていた。
 宇野さんへのオマージュ( hommage)を「装丁探索」(北海道新聞)に書いた時に、全くお会いしたこともない宇野さんから直接お礼の電話がきて、驚きのあまりに、何の言葉も出ないどころか声も出なかった。
 文字を画面の縁ぎりぎりにレイアウトするのが流行ったのも、70年代前後で、そこだけを見てもその時代の流行を感じることができて懐かしい。清刷や写植の文字を切り張りして一杯一杯まで詰めるのも活版印刷時代にはないこの頃の特徴だ。