大庭みな子『浦島草』に浦島草がでてくるが…

大庭みな子『浦島草』(講談社、1977年)に、広島で被爆した女性冷子がひっそりと暮らす東京の家の庭先に浦島草がでてくるが、題名はむしろ小説の最後に、雪枝の兄とその家がたった一晩で煙のように消えてしまうというところを浦島太郎伝説に見立てたものとおもわれる。小説家・桐野夏生さんの「夏生」は、大庭みな子『浦島草』の夏生という女性の名前から取ったものだ。
 浦島草の名の由来は、太い花穂(仏炎苞)から伸びる細長いひょろひょろとしたから釣竿のような付属体を出しているのを浦島太郎が釣りをしている姿に見立てたものといわれている。
 ウラシマソウは性転換する植物ということでも知られている。「比較的小型の個体では雄性となり、仏炎苞内部の肉穂花序に雄花群を形成し、大型の個体では雌性となり、肉穂花序には雌花群を形成する性質がある。つまり、種子由来の若い個体や子球由来の小型の個体は雄性となり、より大型の個体は雌性に転換していくこととなる。」という。