これを読めば永井荷風『濹東綺譚』がより深く理解できるのではないかと、滝田ゆう『寺島町綺譚(全)』(徳間文庫、2006年)を購入。舞台は太平洋戦争当時の玉の井(東京下町、寺島町にあった私娼街で、現在の墨田区東向島及び同区墨田付近)。最後は3月10日の東京大空襲で、玉の井が焼け野原となるところで終わる。つまり、もう玉ノ井を見ることは出来ないが、滝田ゆうが実に細かく暖かなタッチの漫画で残してくれたおかげで、玉ノ井をイメージすることが出来る。漫画といえどあなどれない失われた文化の貴重な記録になっている。

滝田ゆう『寺島町綺譚(上)』部分。



滝田ゆう『寺島町綺談(全)』。