木村荘八『東京繁昌記』(岩波文庫、1993年)を読み始めたが、何となく図版が少ないような感じがして物足りないので、復刻本だが岩波文庫の底本のA4変形判国書刊行会版『東京繁昌記』(昭和62年)を購入。
 まだ読んではいないが、手に持った時の重さがズッシリとしてなんとも素晴らしい! 函絵は荘八最後の作品と云われている「ネオン」、表紙は「みゆき通り」。書中のカラーの作品は「編輯部にそれを望まれたがままに」この本の為に彩色されたもの。まだ眼鏡は伊達眼鏡だが、それでも絵も文字も大きいのは嬉しい。


『東京繁昌記』の初出は『読売新聞』1955年6月〜9月連載の「東京繁盛記」。単行本『東京繁昌記』は演劇出版社から1959年に画文集として刊行される。
 序文には表紙の絵について、「これが一番近作であるが、銀座みゆき通り画いたもので、構図の中央部分に、折から見馴れぬ一階から六階まで総ガラスの壮麗な建物が完成に近づいてきた。やがてそれは、新規の風月堂として開店された。……三年前新聞に絵の出た時には、『繁昌記』の挿絵は何れも単色だった。これに色彩を入れた仕事も『最近作』といえる。編輯部にそれを望まれたまゝに。」とある。
 荘八は、昭和33(1958)年11月18日に亡くなり、『東京繁昌記』は、その約10日余後に発刊され、表紙絵は最後の作品となってしまい、発刊を見ることも出来なかった。翌年、『東京繁昌記』を主対象として日本芸術院賞恩賜賞を受賞した。