「今でも、本のカバーの注文があって、そのための絵を描くことがあります。最近では、装丁家が別にいることが多いので、絵を隅に置いたり、極端に大きくしたり、また、小さくしたりします。ときどき、僕が考えたようには使ってくれないこともあります。昔は、絵描きが装丁すると、そのまま本になったものです。今は、分業制が多く、手順としては仕方のない面もあるのでしょうが、こちらとしては、装丁家の考えを見越した上で絵を描かないと、たまに、とんでもない扱いをされてしまうこともあります。」(末國喜巳・構成『挿絵画家・中一弥』集英社新

下記の装丁を名指しで批判しているわけでははないが、中氏の不満に思っているのはこのようなものではないかというものを探して掲載してみた。



中一弥:画、池波正太郎『おとこの秘図(上)』(新潮文庫、昭和60年)、装丁:辰巳四郎



中一弥:画、池波正太郎ほか『剣客商売読本』(新潮文庫、平成12年)、装丁:新潮社装幀室


装丁家としては、カラー印刷のジャケット(カバー)を何とかカラフルにみせようとしているのだろうが、中氏のばあいは、モノクローム(白黒)の絵が多いので、苦心したのであろう。それが、一弥氏の気にめさかったようだ。