考えられる理由は2つある。その一つ目は、タテ組の文章の場合は、右の行から左の行へと読み進むため、その流れに沿って人間の向きや動きや顔の方向も右から左えと向かっていたほうが自然なのだろう。右向きの顏の場合は、忘れ物をして戻っている場合とか、争いをしていて形勢逆転するシーンとかは、それまでの流れを変えるわけだから、逆に進むような表現の方が効果的に表現できるのではないだろうか。

でもそれだけの理由だとしたら、タテ組の文章の挿絵はみんな左を向いていなければならなくなってしまう。



中一弥:画、乙川優三郎「麗しき花実」164(朝日新聞、2009年)



中一弥:画、乙川優三郎「麗しき花実」167(朝日新聞、2009年)



中一弥:画、乙川優三郎「麗しき花実」181(朝日新聞、2009年)