昨年から「印刷雑誌」表紙を描かせていただけるようになってから、初めて水彩画というものに興味を持ち始めたのだが、「画家はどんな水彩画を描いているのだろうか」という、描き方の参考例として見たくなっただけであり、HOW TO本でもよかったのだ。
大貫伸樹「コンビーフ缶」(「印刷雑誌」、印刷学会出版部、20096月号)
この「みづゑ」を購入してはじめて、浅井忠のすごさを知ったくらいで、水彩だから特に興味を持つということはなかった。
「みづゑ」no.918(美術出版社、1981年9月)表紙
「収穫」「編みもの」などの浅井の作品で知られているのは、ほとんどが油彩だろう。だが、「みづゑ」no.918(美術出版社、1981年9月)で初めて、浅井忠の見事な水彩画に出会い、スッカリ水彩画の虜にさせられてしまった。明治の中ごろに、この見事な水彩画が描かれていたというのは、まさにサプライズで、私を虜にさせるのには充分な作品だ。
浅井忠「灤家屯天長節祝宴」1894(明治27)年(「みづゑ」no.918、美術出版社、1981年9月)
水彩画というものは、えてして逆光のほうが描きやすいような気がするが、それにしても、手前にいる兵隊さんの輪郭部分が微妙に白く残されているのには、さすがによく観察されていると唸らされた。写真がある時代ならまだしも、こんな風景を記憶して描いたのだろうから、ただただ感服させられるだけだ。
浅井忠「グレーの森」1901(明治34)年(「みづゑ」no.918、美術出版社、1981年9月)
今年になってからは、外国の水彩作品を見る機会にも恵まれ、日本に影響を与えたのは誰なんだろうか? 日本では一体いつごろから水彩画が始まったのだろうかという興味が湧いてきた。