恩地孝四郎装丁、和田富子訳『タゴール有閑哲学』(朝日新聞社、昭和4年9月)

shinju-oonuki2006-02-09

 
機械刷り木版画だろうか?見事な装丁だ。墨、薄紫、金泥の3色刷りにタイトル金箔押と印刷も豪華だ。表紙の中央やや上に黒で刷られたペーズリー模様は、見返しにも黄土色に色を変えて続いている。見返しも木版画のように見えるが、裏面にバレンでこすった跡が見られないので、機械刷りの木版画ではないかと判断した。
 
この本も、「恩地孝四郎装幀作品目録」(『装本の使命』阿部出版)など過去のリストには記録されていないので、ただいま製作中のデーターベース「恩地孝四郎装丁作品リスト」には、新規に追加した。
 
装丁美術史的にみると、最新の表現ではなく、やや古い時代に勉強して取り入れた模様であるが、木版画を使っての装丁は、昭和になってから盛んに採用した技法であり、木版画をじかに使った装丁からは、版画家・恩地孝四郎としての意気込を感じる。
 
機械刷り木版画といえども、オフセット印刷よりは重厚感があり、手に取ってみると手触りが何とも言えない品格があり暖かく、高級感が漂ってくるのが分る。