意外に立派だった加藤美侖『是丈は心得おくべし 宴会座興かくし藝』(誠文堂、大正10年4月第4版)初版=大正10年2月、定価=壹円弐拾銭



先日アップした『是たけは心得おくべし 演説座談洒落滑稽』(誠文堂、大正12年4月第20版 定価六十銭)は並製の粗末な本だったが、同じシリーズだというのに今回紹介する『是丈は心得おくべし 宴会座興かくし藝』は、地券紙本と呼ばれ辞書などのように表紙の芯紙(ボール紙)が薄めで柔らかく、布クロース装の上製本だ。本文は糸縢(かがり)りでジャケット(カバー)もついていて、本の作りとしてはかなりよい。定価=壹円弐拾銭は『演説座談洒落滑稽』の2倍で高価だ。


(布クロースとは、布の表面に耐摩擦性、耐湿性、等を高めるために表面加工を施した製本専用の布。)
売れ行きがいいので半額にしたのか、普及版として安価版を発行したのかは不明。


『是丈は心得おくべし 宴会座興かくし藝』の中を覗いてみよう。





実にくだらないことを、懇切丁寧に本にしているのには、脱帽するしかない。普段の飲会でやっているようなことで、本当にこんな本で売れたんだ。それにしてもこの著者・加藤美侖は、硬い内容から柔らかい内容まで書ける人らしく面白い。


加藤美侖の人物像について興味ある方は、南陀楼綾繁「大正の何でも博士 加藤美侖のこと」(「sumus11」)、大屋幸世「水菴加藤美侖とはたれか?」(『日本古書通信』2006年12月号)などに詳しいので、ご参照ください。