小川菊松が書いたキャッチコピーか?

●今では使えない、キャッチコピー


加藤美侖『是竹は心得おくべし』(誠文堂、大正8年12月、35版)
小川菊松が「儲かって儲かって、幾ら遊んでも使いひ切れないといふ風に儲かった」(小川菊松『商戦三十年』(誠文堂新光社昭和7年)と豪語する話題のベストセラーだけあって、さすがにすさまじい売れ行きを見せていた。


初版の発行日は大正8年2月だが、10ヶ月後の同年12月には35版を数えている。1回に何冊くらい増刷したのかは判らないが、単純計算すると売れる本は1点で10万部くらい売り上げたのだろう。


価格や本の作りは、発行年によって大分違っていたようで、物価がどんどん上がるので価格もどんどん高くなったという。手元にある本は定価1円二十銭だが、最初は八十五銭で始まり、「一番賣れたのは大正八年から九年にかけ、定價九十五銭の時代のことであった。」(前掲)という。 


架蔵書の奥付の価格は、ゴム印で「壹圓貳拾銭」とあるが、巻末の広告には「各冊定價九十五銭」とあり、訂正ができなかったものと思われる。



前扉には、今では使用禁止用語などが使われていてそのまま使うことはできないが、「盲目が提灯借りに來た 盲目に提灯いるものか 私に用はないけれど 目あきが私に突當たる」などと、硬い内容の本を何とか理解しやすいようにとマンガもつけてみたりと、ベストセラーへの苦心の跡が見受けられる。広告文も含めて、多くは加藤美侖が書いたというから、この文も加藤が考えたものと思われる。