桜井書店と大同出版1

仕事で神保町へ行ったので、源喜堂に立ちよった。
辻克己の本だったので何気なくぱらぱらとめくっていたら、
奥付の発行所が大同出版だったので、ふと我に返り早速購入してきた。
・辻克己『図案・文案 広告資料大集成』(大同出版、昭和25年)



この本の最終ページ(256P)にある自社広告には「辻克己編著書集」として
・辻克己『現代図案カット大成』
・辻克己『和英図案文字資料大成』
・辻克己『図案文案広告資料大集成』
・手藝・工作・刺繍・服飾参考図案集』
の4点が紹介されていた。


大同出版についての資料をなかなか探せないでいたが、これでやっと3冊そろった。戦後まもなくこの4冊を発行したものと思われる。細かく調査したわけではないが、終戦後間もない時に出版されたせいんもあるのだろう、これらは新規に編輯されたものではなく、戦前に他社から発行されたものの復刻版である可能性が高い。
手元にある
・辻克己『新篇増補図案文字資料大成』(大同出版、昭和28年)
・辻克己『新篇増補応用彩色図案集』(大同出版、発行年、奥付に記載なし)




この2冊の自社広告には全く同じものが掲載されているので、ほぼ同時期に発行されたものと思われる。
辻克己の著書は前掲の4点の他に
・辻克己『応用彩色図案集』
・辻克己『応用図案カット集』
・辻克己『応用図案文字集』
と、辻克己以外の著者による
・清水久義『英字千態図案集』
・木原芳樹『応用略画と図案集』
の2点が掲載されていた。


戦後、桜井均は文芸系の出版社として「桜井書店」を、そして、デザイン系の出版社として「大同出版」を、都合2社を経営していたものと思われる。それは、経営のことを考えずにやれるある意味で桜井の夢の実現とでも言うべきものが桜井書店で、その経済的な支援をする金もうけと割り切っていた出版だったのかもしれない。


大同出版の経営規模などはまだ調べていないが、この程度の出版点数出あることや編集作業のいらない復刻版出版であることから、桜井一人かあるいはもう一人二人の社員がいた程度で、同じ場所で2社の名前で営業していたのかも知れないとおもい奥付の住所を見てみると、桜井書店の住所は

東京都文京区大塚町33


『図案・文案 広告資料大集成』の奥付に記載されている住所も全く同じだ。電話は、
大塚86-0418番、1773番、1780番
の3台を設置してある。


桜井書店の出版点数はこの『図案・文案 広告資料大集成』が刊行された昭和25年からの発行点数は年間1冊程度で、29年から33年までは1点も発行していなかったものと思われる。