どんだけ〜!真部博の装丁はすごい、すごいぞ〜!!!

昨日の古書市の収穫の続きです。
山川方夫『日々の死』(平凡出版、1959[昭和34]年)
がそのどんだけすごい「どんだけ本」(*注)です。
山川は寿屋(現在のサントリー)のPR誌『洋酒天国』(明日当ブログに登場する予定)の編集に関与する。


上はその函、下はその表紙。
(*注:「胸キュン本」「頬刷り本」「添い寝本」に続いて「どんだけ〜本」を新設しました。)




どうしてそんなに驚いてるのかって。これだけではわからないですよね。
下の2枚の写真は、見返しの絵です。
そう、表紙の裏側です。表見返しと裏見返しといって、表表紙(表1)を開いたときに出てくるページと、裏見返しといって、裏表紙(表4)を開くと出てくるページです。
最近では、見返しに印刷するのさえ「経費がかかるのでやめませんか」などと、やんわりといってくるが、内実は「あなたの責任で撤回しなさい」とせまって来るのと同じです。




ここまで来れば感づいた人もいるでしょう。でも、このくらいならまだ探せばあるかも。
下の二点はそれぞれ見返しの裏面で、
見返しの「遊び紙」と呼ばれる部分で、糊付けされていないふらふらしている見返しの半分の部分です。
ちなみに、表2に全面糊付けされている見返しの部分は「力紙」と呼ばれます。
1枚の紙なのに半分ずつ呼び方が違うんですね。




きわめつけは、前扉うらと奥付のページです。この絵がぜ〜んぶ続いているのかどうかは確認していないのでわかりません。
この写真を掲載するためにスキャンするだけでも、うんざりしてしまうほどのこのイラストのしつこさ。たまんなく好きですね。
やれって云われても、やらない。出来ません。版元も生産コストなどを計算して、「ここまでやる必要はないんではないでしょうか」などといってくるのが普通ですよね。イラストレータへの支払い予算は据置で、支払いは変わりませんがやりたければやったら、などと、版元さんにとっては、算盤さえ合えば、何でもいいんです。
ここまでやった本は私は見たことがありません。まさに超人の仕事ですね。




いったいこんなにリアルに描いた植物だけでも何本あるのか。
みんな続きの絵のように見えますが、表紙や函にはやっぱり力が入っていますよね。
でも、ここまで来るともう、見るだけでもいやになってしまうでしょ。


その狂気とも思える執念深い装画は十分「どんだけ〜本」に匹敵しますので、ここに検証して表彰します。
真鍋博は’61年には久里洋二柳原良平とアニメーションの会を結成。未来をテーマにしたイラストや、文明批評などでも知られている。直線を多用した繊細なタッチで描かれた別世界の都会風景は一斉風靡し印象に深い。2000年没。