あやめ會『あやめ草』(如山堂書店、明治39年)は、和英並記の詩集だが、右開きで日本語の詩が、左開きで英語の詩が掲載されている。表裏の表紙の両方から読むようになっている。表紙には「朝武」を改め、新たに名乗り始めた「非水」のモノグラムが記されている。非水のサインは以後○の中に「非」の1文字だけに変わり,さらにはひらがなで「ひすい」のみにと変遷していく。この辺の話は拙書『装丁探索』(平凡社)にも書いた。
奥付は、英語と日本語が出合う中央部分にあるのがおもしろい。さらに中央部分には15点ほどの自社広告も記載されている。そのなかに『耶蘇の戀』という本の広告があり、装丁家名が阪井紅兒とある。
以前このブログで伊藤銀月『続百字文選』(如山堂、明治37年)の装丁家が「紅兒画伯」とあったのを、不注意で蕗谷虹児と勘違いして話を書いてしまった。「虹」と「紅」を見間違えてしまいました。おわびして訂正させていただきます。正しくは阪井紅兒でした。
今日、改めて確認してみると『あやめ草』の自社広告には「紅」のサインがあり、フルネームで阪井紅兒君畫と活字でも記されていた。「やばっ!」と背中から冷や汗が流れた。