挿絵集、束芋『悪人』が届いた

ネットで購入した挿絵集、束芋(たばいも)『悪人』(朝日新聞出版、2010年)が届いた。カバーを拡大してみるといたるところにシュールな世界が展開されているのが刺激的だ。

束芋『悪人』(朝日新聞出版、2010年)カバー

 この本については「現代社会の断片的風景を独特の感性で切り取る現代美術家束芋。彼女が初めて新聞連載小説の挿絵を担当した吉田修一の代表作『悪人』に描き下ろした作品群を一挙に収録。指、髪の毛、内臓などをモチーフとする独自の作風が、小説のテクストと化学反応することで新たな深化を遂げる。横浜と大阪で開催の大規模な展覧会「断面の世代」で公開されたモノクロの原画を連載時のカラーで再現。」(商品説明より)
とあるように、新聞連載された作品が単行本、吉田修一『悪人』(朝日新聞社、2006年)になった時には挿絵が掲載されなかったので、挿絵だけをまとめ挿絵集として出版されたものだ。単行本は総ページ数420ページの分厚い本なので、挿絵を一緒に掲載できなかったということもあったのだろう。

吉田修一『悪人』(朝日新聞社、2006年)

 このように挿絵だけで単行本になるのは極めて稀なケースで、それだけに束芋の挿絵の評価が高かったことがわかる。

 現在もまた、朝日新聞朝刊に束芋吉田修一のコンビで「国宝」が連載されており、束芋の挿絵は「悪人」にも増して冴え渡っている。タイトル文字「国宝」を見ただけでも、挿絵への期待は膨らむばかりだ。人を食ったようなこの文字は「玉玉」かと思ってしまった。

束芋:画、吉田修一「国宝」第8話(朝日新聞朝刊、2017年1月)


束芋:画、吉田修一「国宝」(朝日新聞朝刊、2017年)


 新聞切り抜きを始めたが、「悪人」では250話も続いたので、途中で断念してしまった。今回もまた単行本になるのを期待しての中断になってしまいそうだ。