立体感や陰影を捨てた田代光の挿絵、松本清張「黒い画集」

これも田代光の挿絵、松本清張「黒い画集」(「週刊朝日」、昭和58年)です。大胆な輪郭線だけのさしえだが、ミステリーにはそれまでのデッサン風の書き込む画風では描ききれないものがあり、その不思議さや不安さなどの謎めいたものを表現するために考え出した描き方なのではないかと推察します。大胆な変身ぶりは単なる器用さだけではなく、考察力の高さを感じます。

田代光:画、松本清張「黒い画集」(「週刊朝日」、昭和58年)


 ドンドン描き込んでいく画風とは真反対の画法で、立体感や陰影を捨て、ぎりぎりまで無駄な線をそぎ落として行く先に、謎めいた画面が見えてきたのだろう。
う〜ん、この画法の挿絵も見事としか言い様がなく、ただただ感心させられるばかりで見とれてしまう! 構図もアングルも非のうちようがない!

田代光:画、松本清張「黒い画集」(「週刊朝日」、昭和58年)