【101冊の挿絵のある本(54)…深沢省三が描いた『赤い鳥』表紙絵と目次カット!】

101冊の挿絵のある本(54)…深沢省三が描いた『赤い鳥』表紙絵12点と、これが目次カットかと言わせるほどかなり面白い30点を紹介します。

 

⚫️深沢省三と『赤い鳥』との出会い(『赤い鳥事典』柏書房、2018年)より転載
1913(大正2)年、県立盛岡中学校に入学する。この年、五味清吉のデッサン講習会に参加し、水彩画に没頭するようになる。1917(大正6)年、盛岡中学校卒業後の9月に盛岡中学校の先輩であった清水七太郎を頼りに上京。清水の下宿先に仮寓しながら川端画学校にて藤島武二の指導を受ける。翌年、東京美術学校西洋画科に入学。藤島武二の教室に入る。3年上には武井武雄らがいた。7月の夏休みに帰省し、そこで創刊されたばかりの「赤い鳥」を発見し、華麗な絵、ことに表紙・口絵の美しさ、レベルの高さに、異常なまでの感激と憧れを覚えたと記すほどの出会いを果たしている。
 この『赤い鳥』との出会いの翌年、1919(大正8)年に清水七太郎から清水良雄を紹介される。この際、清水良雄は深沢のデッサンを見て、深沢を『赤い鳥』に重要な画家であると強く感じ、鈴木三重吉へ深沢の『赤い鳥』動画陣への参加を強く勧めている。童画のことについて、鈴木三重吉は清水良雄に一任していたためにその申し出を快諾、深沢が『赤い鳥』童画陣に参加することとなった。(『赤い鳥事典』柏書房、2018年)より転載。

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120059j:plain

深沢省三:画「うららか」(『赤い鳥」第18巻第4号、表紙、昭和2年4月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120302j:plain

深沢省三:画「花」(『赤い鳥』第18巻第6号、表紙、昭和2年6月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120440j:plain

深沢省三:画「虫かご」(『赤い鳥』第19巻第3号、表紙、昭和3年9月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120542j:plain

第19巻第3号、深沢省三:画「虫かご」(『赤い鳥』表紙、昭和3年9月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120636j:plain

第19巻第5号、深沢省三:画「高原遊馬」(『赤い鳥』表紙、昭和3年11月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120729j:plain

深沢省三:画「サンタクローズ」(『赤い鳥』第19巻第6号表紙、昭和2年12月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510120849j:plain

深沢省三:画「支那服」(『赤い鳥』第20巻第2号表紙、昭和3年2月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510121021j:plain

深沢省三:画「春光」(『赤い鳥』第20巻第3号表紙、昭和3年3月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510121129j:plain

深沢省三:画「五月」(『赤い鳥』第20巻第5号表紙、昭和3年5月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510121251j:plain

復刊第10巻2号(56号)、深沢省三:画「トマト」(『赤い鳥』昭和10年8月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510121342j:plain

深沢省三:画「鳩」(『赤い鳥』復刊第10巻3号(57号)、昭和10年9月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200513160958j:plain

深沢省三画「龍宮の使」(『赤い鳥』第22巻第3号表紙、昭和4年3月)

コロナ休暇に、図書館から大正7年に創刊された『赤い鳥』を借りて眺めていたら、どんどん面白くなり、はまってきたところで図書館が閉鎖されてしまいました。どうしても続けて読みたくなり、オークションなどで次々と40数冊ほど買い集めました。その面白さのツボとはなんなのかを少しだけ紹介します。写真上は深沢省三が描いた『赤い鳥』の表紙絵で、下が、清水良雄が描いた絵です。『赤い鳥』のアートディレクター的存在だった清水良雄の下段の絵は、写真のような感じに描く写実的な絵ですが、上の段の深沢省三の絵は、1枚の絵にいろんな写真を張り合わせたように描くコラージュという技法や、遠近法の反対の逆遠近法などが取り入れられていて、当時、前衛美術と呼ばれていた画法を取り入れて斬新な感じがします。こんな画風の違いからも、深沢が表紙を描く機会が少なかったのもうなずけるような気がします。

鈴木淳の兵役がなかったら、深沢が表紙絵を描く機会はなかったのではないかと、勝手に推測しています。

f:id:shinju-oonuki:20200510121730j:plain

上は深沢省三が描いた『赤い鳥』の表紙絵で、下が、清水良雄が描いた絵


⚫️深沢省三が描く『赤い鳥』の目次カットが面白い!


 鳥獣戯画やイソップ物語を彷彿させるような擬人化された動物たちが繰り広げる、1コマ漫画のようでもあり、謎解き絵のようでもあり、コミカルでユーモア溢れる楽しいカットになっている。『赤い鳥』が踏襲している絵の表現スタイルにこだわらず、深沢が自由に描くスペースが確保されている目次カットスペースは、もしかして清水良雄が画風の違う深沢に配慮して確保した特別なキャンバスなのかもしれない。表紙絵や口絵ほどには目立たないスペースではあるが、深沢にとっては、拘束のないスペースに描くことは、自らの表現の場を与えられたようで、粋に感じて描いていたのではないかと思わせるような、生き生きとした楽しげな印象が伝わってくる。

 ただ、児童雑誌の目次カットにしては、難しく、私には4〜5点しか理解できませんでした。赤いウサギの絵のペンギンとしろくまの「ウサギへの思いやり」、イノシシとネズミの「ネズミ歳の正月号で、イノシシを追い払っている」絵など。今更ですが、目次カットにもタイトルを書いておいてくれると良かったんですが……。

 

 

これは「わらの中の七面鳥」の歌か? 🎵さあたいへんださあたいへんだ七面鳥が 逃げてゆくさあみんなで つかまえろ池のまわりを 追いかけろ〜🎵

f:id:shinju-oonuki:20200510122452j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第11巻1号、大正12年7月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510122738j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第11巻2号、大正12年8月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510122855j:plain

深沢省三画:目次絵(『赤い鳥』第11巻3号、大正12年9月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510122953j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第11巻4号、大正12年11月)

 

この絵は、子年の新年号なので、前年のイノシシを追い払っているのだと思います。

f:id:shinju-oonuki:20200510123117j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第12巻1号、大正13年1月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510123215j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第12巻2号、大正13年2月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510123344j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第12巻3号、大正13年3月)。深沢が描く目次絵が面白そう、と思って調べるきっかけは、この絵でした。ウサギが氷の上で餌を確保できないでいるのを見て、クマとペンギンがそっと置いて行ってあげた絵で、優しさや思いやりを視覚化したもので、そのことに気がついて、全巻の目次絵を見たくなり、図書館で借りて複写し始めたら、コロナ騒ぎで図書館が閉鎖されてしまいました。その後オークションなどで45冊ほど入手しましたが、この続きはコロナ騒ぎが収まってから、やれせていただきます。

 

f:id:shinju-oonuki:20200510124205j:plain

第12巻4号、深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』大正13年4月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510124355j:plain

第12巻5号、深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』大正13年5月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510124448j:plain

深沢省三画:目次絵(『赤い鳥』第13巻1号、大正13年7月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510124721j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第13巻2号、大正13年8月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510124837j:plain

鈴木淳画:目次絵、(『赤い鳥』第13巻3号、大正13年9月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510124935j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第13巻5号、大正13年11月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200510125153j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』第13巻6号、大正13年11月)

 

逃げた魚は大きい、を思い浮かべているのか? 坊主(一匹も釣れない)で帰る侘しさですね。

f:id:shinju-oonuki:20200510125301j:plain

深沢省三画:目次絵(『赤い鳥』第13巻6号、大正13年12月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510125409j:plain

画家不明:目次絵、(『赤い鳥』第15巻3号、大正14年9月)

 

卯年の新年号なので、ウサギの大好物の人参の門松や、月にいるウサギの餅つきなどを配している。

f:id:shinju-oonuki:20200510125511j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第18巻1号、大正16年1月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510125652j:plain

画家不明:目次カット(『赤い鳥』第18巻2号、昭和2年2月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510125757j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第18巻3号、昭和2年3月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200510125850j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第18巻4号、昭和2年4月)

 

蓮の葉がハートになって「鯉が恋してる」というダジャレだと思いますが、この絵が児童雑誌に載っていても、ワカンネ〜だろうな!

f:id:shinju-oonuki:20200510130201j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第18巻5号、昭和2年5月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200511070439j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第18巻6号、昭和2年6月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200511070543j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第19巻1号、昭和2年1月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200511070643j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第19巻2号、昭和2年8月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200511070752j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第19巻3号、昭和2年9月)

 

絵としては何か面白そうで好きな絵ですが、タイトルをつけるとしたら「果報は寝て待て」かな? 違うかな? ウサギは、きのこで何を釣ろうとしているのだろうか? 

f:id:shinju-oonuki:20200511070856j:plain

深沢省三画:目次カット(『赤い鳥』第19巻4号、昭和2年10月)

 

小鳥の歌はたくさんありますが、このカットは、🎵小鳥はとっても歌が好き〜母さん呼ぶのも 歌でよぶ〜🎵の作詞:与田凖一「小鳥の歌」を視覚化したのではないだろうか?

f:id:shinju-oonuki:20200510220222j:plain

画家不明:目次絵(『赤い鳥』第1巻3号目次カット、昭和6年3月)

 

 

🎵かわいい かわいい 魚屋さん ままごと遊びの魚屋さん〜🎵の作詞:加藤省吾「かわいい魚屋さん」のカットでは直井だろうか>

f:id:shinju-oonuki:20200510222223j:plain

画家不明:目次絵(『赤い鳥』復刊第1巻4号、昭和6年4月)

 

f:id:shinju-oonuki:20200511072754j:plain

深沢省三画:目次絵、(『赤い鳥』復刊第11巻7号、昭和11年7月)

 

 

f:id:shinju-oonuki:20200511071336j:plain

深沢省三画目次絵、(『赤い鳥』復刊第10巻3号、昭和10年9月)