以前、ハンプティ・ダンプティは男性が多いと書いたが、数少ない女性のハンプティを銅版画:東逸子、訳:矢川澄子『ファンタジーマザーグース』(すばる書房、1976年)に見付けた。東さんの大学卒業の年に刊行された絵本だ。
東さんのfairy銅版画集といった感じで、かわいい妖精達の大きな美しい銅版画が16枚ほど挿入されているのが魅力ですが、どうしてこんな挿絵になるんだろう? という発想の面白さが、今まででみた他のハンプティ・ダンプティにはない、もう一つの魅力になっている。


この絵は塀の上から「すってんころりん」したところか? それでも落ち葉のじゅうたんに救われて、割れなかった? ハンプティはタマゴの中に閉じこめられた少女だが、タマゴを割ろうとしている小鳥達はハンプティを助け出そうとしているのか、意地悪して割ろうとしているのか? 救出劇だとすると閉じこめられた空間からの脱出だが、意地悪だとすると、一難去ってまた一難? とにかく難解で凡人には理解が及ばないが、それゆえに楽しい大人の絵本だ。