文中に「田山花袋氏『平通盛』(京文堂?)等でせう」とあるのは田山花袋『通盛の妻』(金星堂、大正8年)の事ではないだろうか。
また「新潮社から出した久保田万太郎の短編集の中で……箱庭に用ひる玩具の堂宮や、樹木、旅人、瀧、などを散らした模様を更紗の如くにした」とあり、書名がないが、久保万太郎『東京夜話』(新潮社、大正7年5月)のこととおもわれる。久保万太郎「四月の日記」には、「名取春仙君を煩はした『東京夜話』の表紙をみる。箱庭の道具をいろいろとり合わした千代紙風のもの、大へんやさしい感じのするものができた。」と記されている。
名取春仙:装丁、久保万太郎『東京夜話』(新潮社、大正7年5月)