現在使われているようなカバーはいつごろ誕生したのだろうか? 紀田順一郎さんによると、(函は)日本独特のもので、「現在のような形としては、夏目漱石の『三四郎』(1909[明治42]年)が最初の部類で、本のカバーやオビなどとともに、明治四十年代に日本のブック・デザインの基本がきまった」(「図書設計」39号)という。そこで、私も早速、本箱を漁ってみたら、それらしき本が2点出て来た。今回アップした書物はジャケットが付いていたおかげで、どの表紙も発売から100年以上も経過したとは思われないほど綺麗に保たれている。




落合直文・内海弘蔵『国文学史教科書』(明治書院明治36年)上は、教科書のジャケット、いろいろな内容を詰め込んでおり、オビの役目なども果たしている。下は教科書なのに豪華な装丁用クロス装上製本の表紙



磯村大次郎『実用刺繍術』(博文館、明治40年3版/初版=明治37年)右がジャケット


明治期の復刻本ではあるが、ジャケット付きの書物があった。



石川啄木『あこがれ』(小田島書房、明治38年・復刻版)左がジャケット


今日のジャケットとほとんど変わらない。もう少しがんばって探せば、明治30年代前半に作られたジャケットが見つかりそうな気がするが、書物にジャケットを付けるというのが一般化したのは紀田さんのいうように明治40年代なのだろうが、始まりは明治30年前後だと推察する。