「さしゑ」創刊号の巻頭に下高原健二が「創刊について」に創刊の意図や使命感などについて書いているので、再録してみよう。



「さしゑ 1955年・第一号 今日、数多くの雑誌が刊行されていますが、さしえの為の雑誌が一冊も見当たらないということは、我々挿絵画家にとつて実に淋しく張り合いのないことです。それ程に挿絵が無価値であり、論議の外にある性質のものとは考えられません。


 独善と高踏を許される純美術の世界なら相手はいらないが、挿絵の場合そうはいきません。大衆という名の、最も率直で、むつかしい読者が相手であり、それを代表するジャーナリスト、それぞれの個性ある一家言をもつ作家。然しこれらの人々は画家に批評を直言することは少ないのです。いわば声のない批評家と言えましょう。


相手は何をのぞんでいるか。挿絵画家にとつて最も関係深いこれらの人々からの真実の希望、意見を知ることによって、始めて(ママ)、明確な反省と努力が行われ、明日への進歩と向上が期待されるのではないでしょうか。


季刊誌「さしゑ」は、こうした意図と使命をもつて生れました。大方の御叱正と御庇護をお願い致します。 下高原健二 」