桃太郎の年齢が、とうとう7歳とあるのを見つけた。北川千代『桃太郎さんの話』(東京日日新聞、1928年)によると

「『おぢいさんやおばあさんは、今頃何をしてゐるだろうなあ』そんなことを考えると、まだ七つにしかならない桃太郎さんは、少しお家が恋しくなって来ました。それで黍団子のふくろを手にもったまま、自分の歩いて来た路の方を、せのびをして眺めてみたのでした。」とある。


7歳といえば小学二年生。この後、ウサギの親子に出会い、きびだんごと引き換えに、どんな遠くの声でも聴こえる耳をもらい、更に、カニからどんな遠くでも見える目をもらう。これらの不思議な力を借りて、鬼退治を成功させる。どことなくひ弱で、魔法のような力を借りてやっと鬼退治を成し遂げる桃太郎は、気は優しくて力持ちの英雄伝説の桃太郎とはどこかが違う。


鳥越信『桃太郎の運命』(日本放送出版協会、昭和58年)は「北川千代は、ある時期江口渙と結婚していたことなどもあって、終生社会派的意識を持ちつづけた作家であり、そうした立場からの批判が無意識のうちに働いていたのかもしれない。その意味では、……プロレタリア児童文学系列の萌芽的作品だったともいえる。」と評している。