ももたろうはなぜ、鬼の征伐に出かけたのだろうか。鬼の征伐にこそ、発行者の『桃太郎』刊行の意図が隠されているのではないだろうか。

おばあさんが桃を拾ってくる話は、子どもを欲しいと願う老夫婦が、神様のおぼしめしで子宝を授かる、という話で完結しているように思える。


その後、桃太郎は、ぐうたらな生活を送る話になったり、完全無欠な人格の子どもになったりと、さまざまな話が伝えられているが、この桃太郎が鬼退治に行くのが、子宝を願う話に加わる、もう一つの別の話のようにも思える。


桃太郎話の多くは、旅人が来て、都で鬼が暴れている話をする。それを聞いた桃太郎は鬼退治を思いつく、という話だ。鬼退治というある意味で、戦の話を加えていく事で「桃太郎」を刊行していく発行人の意図が加わってくる。このことが、さまざまな桃太郎噺を誕生させる要因になっていったではないかと思われる。