丹下左膳のキャラクターの誕生とその工夫について小田富彌はさらに「たとえば『上三尺』というものがあります。一本独古(*金偏に古)の角帯を締めますね、ヤクザはその上からソロバン染に染めた上三尺を、グッと締めるんです。これが粋なんですな。


それから喧嘩のときは「三方からげ」をする。三方で尻をからげる、それがヤクザの出入りの決まりやったらしい。そういうことを大阪新聞の編集長だった行友李風から教えてもろうたんです。──この新聞には一時、北野先生も私も入社しておったんですよ。」(『名作挿絵全集』平凡社、1980年)と、挿絵を描いた時のベースになったイメージを語っている。



挿絵:小田富彌、『新版大岡政談』


「『弥太郎笠』を描いた時は、子母沢寛さんが、だいたいヤクザの風俗はこんなもんじゃあないかと、あの人もはっきりは知らんのですが、教えてくれました。まあ、あっちのを聞き、こっちに尋ねしてやりましたが、私が工夫して創り出したようなもんですな。とにかくどれが本質的な姿か、私にも本当のところはわからんのですから。」(『名作挿絵全集』平凡社、1980年)



挿絵:小田富彌「弥太郎笠」



挿絵:小田富彌「弥太郎笠」