最近、私が集めている本はのほとんどが、1924(大正13年)の華宵事件で「少年倶楽部」から高畠華宵が去り、その後釜として活躍した挿絵家たちの本や挿絵が掲載されている本ばかりです。斉藤五百枝(さいとう いおえ)もそんな挿絵家の一人だ。どことなくノーマルで、特別強烈な個性があるわけでもないので、伊藤彦造や樺島勝一のようにスター的な存在ではなかったのかも知れませんが、人物を描かずに「少年倶楽部」の表紙装画を12年にわたって描いていたので話題性のある挿絵家でもあります。



吉川英治全集 龍虎八天狗』(講談社、昭和43年)。練馬区立図書館の「除籍処理済」のシールが貼ってありますが、先月、武蔵野市立図書館で開催された除籍本を無料配布する古書市で、明らかに古書店さんだと思われる人が、段ボールで10箱分ほどを車に運んでいました。普通の古書市で「除籍」シールが貼られた本をよく見かけますが、こうして古書市に回ってくるんですね。ただで入手した本とは言え、車で運んで、定価をつけて古書市に並べる手間を考えると、この本150円は安い。函は擦れているが誰かが開いて読んだ気配はない。



挿絵:斉藤五百枝『吉川英治全集 龍虎八天狗』