2010-06-05から1日間の記事一覧

挿絵画家・中一弥が「長谷川伸賞」を受賞した時に、村上元三は「……その画風も、きわめて手がたく本格的なものであります。とくに時代考証をきびしくやってくださいますので、わたしども安心しておまかせすることができます。」(「大衆文芸」)と、それまで「花頭巾」「三界飛脚」「天の柱」など後世に残るたくさんの作品で、一弥とコンビを組んできた村上らしい挨拶を送った。これだけを読んでも文学作品における挿絵の重要性を理解できるのではないだろうか。ゆえに、単行本や全集にするときには、ぜひとも挿絵も一緒に掲載してほしいのです。

「吉川英治全集」は、新たな挿絵を描いて挿入しているが、これでは意味がない。出版社は、挿絵の重要性に関する認識が欠けているのではないだろうか。新聞掲載時の白黒のイラストよりは、カラーの挿絵を新たに加えたほうが見栄えがいいのはわかるが、明らか…

新聞小説の挿絵は、注目率を高め、読解を助け、人気を牽引するだけではなく、時には著者のイメージ作りに影響を与えることもあり、作品形成に重要な役目を果たしていることがあり、文学的資料としての価値は、文章に劣らない。

主役のイメージ作りにも、多くの作家が、挿絵にヒントを得ながら作り上げたことを述べている。新聞小説の場合は、文章に詳細な説明がなくとも人物の着物や髪形、身長、体重などを先行して作り上げなければならないことが多いからだ。風景、建物などについて…

昨日は、神保町・東京堂書店への納品で気分をよくしたので、帰途、小宮山書店のガレージセールに立ち寄ってみた。3冊で500円だが、あるわ、あるわ、岩田専太郎の挿絵、田代光、御正神、中尾進などなど、日本出版美術家連盟の先輩たちの作品ですぐに10冊を超えてしまう。

ネットでは1冊500円以上の吉川英治全集も、ここでは3冊500円。全巻欲しかったが、3冊だけでずっしり重い。 ほかには、須田剋太が描いた「街道をゆく」も購入。「坂の上の雲」は2種あったが、いずれにも挿絵は掲載されていない。新聞小説を単行本にする時…