挿絵画家・中一弥が「長谷川伸賞」を受賞した時に、村上元三は「……その画風も、きわめて手がたく本格的なものであります。とくに時代考証をきびしくやってくださいますので、わたしども安心しておまかせすることができます。」(「大衆文芸」)と、それまで「花頭巾」「三界飛脚」「天の柱」など後世に残るたくさんの作品で、一弥とコンビを組んできた村上らしい挨拶を送った。これだけを読んでも文学作品における挿絵の重要性を理解できるのではないだろうか。ゆえに、単行本や全集にするときには、ぜひとも挿絵も一緒に掲載してほしいのです。


吉川英治全集」は、新たな挿絵を描いて挿入しているが、これでは意味がない。出版社は、挿絵の重要性に関する認識が欠けているのではないだろうか。新聞掲載時の白黒のイラストよりは、カラーの挿絵を新たに加えたほうが見栄えがいいのはわかるが、明らかに資料性の価値は下がる。


いい企画とは、面白いか、役に立つか(資料性が高い)に尽きると思っているので、その両方をぜひ追求して売れる本を作ってください。