このモダンな装画がなぜ表紙にならないのか?


・弘田龍太郎作曲『いなば兎』(早稲田大学出版、大正13年
の前扉(下)は表紙(上)よりきれいだと思いませんか。
超モダンでかっこいいのだが大正13年にはこのような絵を使った装丁は少ない。つまりまだ市民権を得ていない様式だったのではないか。




私の勝手な想像ですが、この本の最初の表紙案は見返に使われている絵だった。しかし、出版社からの提案でもう一案描くことになる。そのときに、「もっと小学生にも分かりやすい絵を」という注文がつけられる。しかし画家さんは納得いかず、もう一案書きますが、最初の絵も扉に使ってもらえないでしょうかと嘆願する。両者の合意点で作られたのがこの本の装丁ということだ。


ついうっかり横道に走ってしまいましたが、今回は図案文字での登場でした。大正13年ということを考えると、これも見事な図案文字ですね。「な」の点を横棒にしたり、「な」と「ば」の◎のぶっ文を大きめにして形をそろえたりと、苦心の跡が見えて、フォルムがとても新しくきれいだ。