写真は
・装丁・清水良雄『赤い鳥』第13巻4号(赤い鳥社、大正13年)
『赤い鳥』は1918年7月1日に鈴木三重吉が創刊した童話と童謡の児童雑誌で、近代児童文学や児童音楽の創世期に重要な影響を与えた。1929年〜1931年の間休刊があるものの三重吉の死(1936年)まで198冊刊行され続けた。創刊号には芥川龍之介、有島武郎、泉鏡花、北原白秋、高浜虚子、徳田秋声らが賛同の意を表明し、表紙絵は深沢省三も描いているが、ほとんどを兎のようなモノグラムで知られる清水良雄が描き続けた。
『鈴木三重吉選集」では、津田青楓と鈴木三重吉のソリが合わずに、全巻完成する前に途中で装丁家が代わってしまったが、そんな気難し屋の三重吉も清水良雄とはうまくいっていたようで、清水とのコンビを長期間続け、児童書に見事な金字塔を打ち立てた。
清水良雄のこのしぐさや表情をとらえる感性の鋭さは絶品ですね。どうよ、このめまいを起こしそうななんとも愛おしい装画は。魅かれちゃうよね。
タイトル文字も「赤」は人間のようにも見え、「鳥」は犬のように見えてしまい、どことなくユーモラスで、活字のようなきっちりした文字にはないほほ笑ましさや暖かさを感じるもじになっているよね。それが装飾図案文字の特徴だが、読みやすさと遊び心の凌ぎあいがあり、創作者の思案の後が読み取れるのも装飾図案文字の楽しみなところだ。
実は掲載されている広告にも当時の見事な図案文字が使われているのを見つけた。
広告の挿絵も大正時代を感じさせて、楽しい。
クラブ練り歯磨きもプラトン万年筆も共に中山太陽堂の広告だと思うが、不確かです。後で調べてみます。
さらに、プラトン万年筆といえばあの山六朗による図案文字の見事なタイトル「女性」「苦楽」という雑誌を出していたプラトン社と同じ中山太陽堂ではないかな? 手元に資料がないので、これも宿題にします。
クラブ練歯磨の漢字などは、大正13年の図案文字としてはかなり出来のいいものといっても良い。この広告は山六郎や山名文夫は関係していないのだろうか? 次々と新たに出てくる疑問に興味はつきない。