高橋忠弥装丁、石上玄一郎『発作』(中央公論社、昭和32年)を3冊500円コーナで発見した!


白百合女子大学の図書館に勤めていたAさんが、この4月から中京大学准教授になって赴任したので、そのお祝いパーティがお茶の水のホテルであった。せっかくお茶の水まで行くのなら、神保町古書街に行かない手はないとばかりに、ちょっと足を伸ばしてみた。


何しろ神保町古書街は、美智子皇后陛下が外国記者団の「お供も警護もなしに一日を過ごせたら何をされるか」との質問に、「隠れみのを使って透明人間になり、学生のころよく通った(東京・千代田区)神田や神保町の古本屋さんに行き、もう一度本の立ち読みをしてみたい」とすてきな夢を語ってくれた街で、私の方が皇后陛下よりひと足お先に立ち読みを体験してしまいました。


この話には後日談があり、古書店ではすてきな美人が来るというので、家族みんながその美人が来店するのを楽しみにしていたという。そして、その方が皇太子さまご成婚のパレードの時に、馬車に乗っていたのがその美人のお客さんと同じ人物だったのがわかったそうだ。


話は現実に戻って、その日はなぜか、ふと高橋忠弥の装丁本がありそうな気がして、一度通り過ぎてしまった小宮山書店のガレージセールまで戻って3冊500円コーナーを覗いた。棚に入っていたら多分見つからなかったと思うが、たまたまたくさん運んできて棚に入れる本を床に広げてあり、忠弥が描いた表紙絵が見えたのがラッキーで、「あっ忠弥の装画だ!」と大発見でもしたかのように喜び勇んで即座に抱え込んだ。この1冊のおかげで今日一日が楽しくて仕方がなかった。古書市も開催されていたがもうこの本の発見で今日の幸運を使ってしまったとおもったので、足を運ぶ必要がなくなった。



先週、荒田秀也画伯とこの『発作』について話をしている時に、私が「忠弥は大八車が好きですよね」というと、荒田さんは「これは、大八車に見立てて描いているが、忠弥にとっては幾何学形態のモチーフなんです」と言っていた。そういわれてみれば、いつもなぜ同じような角度で大八車が立て掛けてあるのかな? と疑問に思っていた。


写真下は「みずゑ」(美術出版社、1969年10月)に掲載されていた、高橋忠弥の大八車をモチーフにしたタブロー。下の作品になると確かに大八車のイメージからはほど遠くなっている。