『グラフ日本映画史 ああ活動大写真 戦前篇』(朝日新聞社、昭和51

久しぶりに、高円寺の古書市に出かけた。購入したい本が沢山あったので、購入すべきかどうか悩んだ末にあきらめてきた本が数冊あって、その中の1冊
・『グラフ日本映画史 ああ活動大写真 戦前篇』(朝日新聞社、昭和51年)装丁=山藤章二
はどうしてもあきらめきれず、帰宅してからネット古書店で購入した。



おかげで2500円だった本を500円+郵送料で購入することができた。誰も開いたことがないのではないかと思われるほど、きれいに保存されていた本で、いつも価格協定を結んで効果だと思っていたネットのほうが、たまには安くていいこともあるんだ、なんて変に納得させられました。
今回は『グラフ日本映画史 ああ活動大写真 戦前篇』の中からポスターを転載させてもらいながら昭和初期のキネマ文字を見ていこうと思います。


昭和2年の日活映画ポスター「彼をめぐる五人の女」は超モダンだ。昔はポスターの隅から隅まで手書きだったようで、小さな文字までがモダンなキネマ文字になっていて、嬉しさにめまいがしそうです。



昭和3年の日活映画ポスター『江戸三国志』もしびれる。誰がデザインしたのか調べれば分かるのだろうか? この時代の映画ポスター集等ないものだろうか。まとめて見てみたいですね。 



キネマ旬報」や「キネマ・ニュース」で紹介したキネマ文字を使った広告のほとんどが洋画だったが、邦画もかなり健闘していますね。さらにもう一枚邦画のポスターをみてみよう。
昭和2年、日活映画ポスター『忠次旅日記』



いったいどうやって描いたのか、こうなると原画を見たくなる。そういえば青梅に映画の看板美術館があったが、ここに行けば昔のポスターや描き方などが分かるのだろうか。もっとも看板とポスターではちょっと違うかもしれないですね。
「青梅宿映画看板街道」下記ホームページで看板が見られます。
http://www.ome.or.jp/somu/news/newsindex/news2004.htm
看板製作者・久保板観さん通称・板観さんの写真もありました。


もう少し時代をさかのぼってみよう
大正時代にも見事なキネマ文字のポスターを見ることができる。
・大正15年10月、日活映画ポスター『鳴門秘帖



アールヌーボー様式の特徴を取り入れた見事なキネマ文字だ。昭和初期に大ブームになるキネマ文字がこのポスターでほとんど完成されている。波の表現にもアールヌーボー様式は完璧に摂取消化されている。


『グラフ日本映画史 ああ活動大写真 戦前篇』で、キネマ文字を使った映画ポスターの制作時期をさかのぼることが出来るのはここまでだが、映画雑誌の紹介があり、
・『活動之世界』(活動之世界社、大正5年創刊)装丁=齊藤佳三
が記載されていた。
大正初期から中期にかけての映画ポスターにも、キネマ文字を見つけることができる可能性が残された。



齊藤佳三といえば、山田耕筰とともに大正3年に日比谷美術館でデア・シュトルム社主催の「未来派、立体派、表現派木版画展」を開催した前衛美術運動の紹介者の一人でもある。驚くなかれ村山知義が前衛美術を引っさげて帰国する9年も前の話だ。自らアールデコ調のポスターやジャケット、家具等を制作したデザイナーでもある。