『書物往来』『愛書趣味』『書物展望』

  
「齋藤昌三はもともと在野の書物愛好家であった。趣味の雑誌を発行しているうちに、明治の書物に関する愛着と知見がふえ、震災後の機運が彼を明治文化研究に向かわしめた。一九二五(大正十四)年、齋藤はやはり書物愛好家として知られる石川巌、神代種亮、が前年から始めた雑誌『書物往来』に編集同人として参加。また半年後には、パトロンを見つけて、雑誌『愛書趣味』を創刊、単独で編集にあたった。彼がそこで積極的におこなったのは、明治期の文献の発掘・紹介である。彼の場合、ただオタク的に書物を愛するというのではなく、出版ジャーナリズムを動かしていく実践的な能力を手放さなかった。吉野作造尾佐竹猛石井研堂らとともに明治文化研究会に加わって刊行した『明治文化全集』(一九二八年)や、白木屋での古書即売会の百貨店進出(一九三二年)などがその功績だが、何と言っても最大の成果は、雑誌『書物展望』の刊行および書物展望社の運営だった。」