【101冊の挿絵のある本(28)… 小村雪岱(明治20《1887》〜昭和15《1940》年):挿絵、國枝完二『お傳情史』(新日本社、昭和11年、)の挿絵を紹介します。】
この本には7点の挿絵が掲載されています。ここでは『名作挿絵全集』(平凡社、1980年)に掲載されている挿絵も含め13点を紹介します。
国枝完二『お傳情史』初出:『現代』昭和10年9月〜11年10月。
『お傳情史』は『お傳地獄』の続編であり、最後にはお伝は逮捕され首切り浅右衛門に処刑されて終わります。
『お傳情史』は、雪岱の代表的な作品でもある邦枝完二『樋口一葉』(昭和8年9月〜9年6月)の後に描かれた挿絵で、雪岱の最も円熟していた時期ではないかと思われます。画像は、小村雪岱:挿絵、邦枝完二『樋口一葉』(『婦女界』昭和8年9月〜9年6月)。
日本文学はニュースを脚色して報道したのが始まりと言われており、「高橋お傳」のそんな誇張され脚色されすぎたニュースの延長上にあるのではないか、と思っています。「高橋お伝」事件を連載小説風に伝えた新聞報道。
「毒婦、高橋お伝の報道が各新聞の報道欄において盛行する中で仮名垣魯文は江戸の庶民に親しまれた草双紙合巻『高橋阿伝夜叉譚』を速成、刊行した。……文体は草双紙合巻ないし読本の文体で、読み物ふうに書かれている。……本書はお伝の行状、その一代記をテーマとした点は新聞記事と同様であるが、草双紙合巻に仕立てるためにお伝の物語とは全く関係のない無頼漢の犯行などをこじつけて挿入している。とくに絵本として山賊、無頼漢などの人物、山寨、溪谷などの深山幽谷の環境、喧嘩、殺人などの事件の絵組みが見せ場として必要であった。この種の場面が『高橋阿伝夜叉譚』の全スペースのほとんど八割方を占めている。」(本田康雄『新聞小説の誕生』平凡社、1998年)。