明治41年発行『国民百科辞典』の挿絵を描いた画家

我が家の本箱は、本を前後2段に詰め込んでいるので、後ろに入ってしまった本はなかなか見ることができない。今回たまたま明治期の本を本棚から引っ張り出していたら、もう手元にはないと思っていた『国民百科辞典』(冨山房明治41年)が出てきた。この辞典には、別刷りしてノリで貼りこんだたくさんの絵が掲載されている。それらの絵を描いた画家たちの名前が、目次に織田一磨、五姓田芳柳、戸田塘仙、西野猪久馬、横山慶次郎と5名が連れられている。
 しかし、掲載されているほとんどの絵にはサインもなく、活字での記載もないので、この5人の画家たちがそれぞれどの絵を描いたのかはわからない。




画家不明『国民百科辞典』(冨山房明治41年



画家不明『国民百科辞典』(冨山房明治41年



画家不明『国民百科辞典』(冨山房明治41年



画家不明『国民百科辞典』(冨山房明治41年




画家不明『国民百科辞典』(冨山房明治41年



ところが、なんと、じっくり眺めていたら、5点ほどの挿絵にかすかにサインがあるのに気がついた。それぞれのイニシャルを確認すると「K.OTA」「芳柳」「IN」「KY」「LITH,E,KOSHIBA」と読むことができる。「KOSHIBA」というのが目次にはないが、5名の絵を確認するることができた。目次の記載されている戸田塘仙のサインは見つけることができなかった。




織田一磨「熱帯植物」(『国民百科辞典冨山房明治41年




五姓田芳柳「世界諸人種の数例」(『国民百科辞典冨山房明治41年




横山慶次郎「昆虫及び蝶類」(『国民百科辞典冨山房明治41年




横山慶次郎「寒帯動物」(『国民百科辞典冨山房明治41年



西野猪久馬「海藻」(『国民百科辞典冨山房明治41年



「正価金参園七拾園」がどれほどのものかわかりませんが、かなり高価な本だったのではないかと思います。明治40年頃のあんぱんは1個が1銭だったようですので、あんぱんを150円として単純計算すると55,000円か? 明治45年の人口は5,000万人と推測されていますので、今の約半分とすると、現在なら1,000部くらいは売れるのではないかと仮定すると、当時も500〜600部くらいは売れたのではないでしょうか? 明治40年頃は約13,000市町村あったようなので、25市町村に1冊か! 市町村の単位は300〜500戸なので、7500戸〜12500戸に1冊。村長さんは持っていないが市長さんの家に1冊という感じでしょうか? 現在の市の数は750ですので、ちょうど全国の市長さんが1冊持っているような感じでしょうかね。つまり各市に1冊ということで、今も昔も一般人にはとても手が届く代物ではなかったようですね。


 数年前に私も定価50,000円+税の本、加納克己『日本操り人形史』(八木書店、2007年)のデザインを担当しましたが、この本も確か、500部くらい売れたと記憶しています。