田代光の連載小説の初挿絵、野村愛正「光りを行く」

本棚を漁ってみたら、田代光の初めての連載小説の挿絵、野村愛正「光りを行く」を「キング」(昭和8年10月号)にみつけた。


田代は「百万部の大雑誌の連載を貰ったのであるから鬼の首を取ったような気がした。その時の母親の喜びようといったらなかった。」(田代光『変手古倫物語』美術倶楽部、昭和56年)と大きな仕事が出来る喜びを記しているように、このころの「キング」は発行部数100万部を誇る国民雑誌で、19歳の若い田代光としては初めて経験する大ひのき舞台だった。「光りを行く」という題名も自分の名前に照らして大きな励みなったようだ。



 これが田代光の19歳の初仕事なのか、すご過ぎる!  15歳で白日会に初入選した天才的な少年の話は知っていたが、父親の失業で、長兄であるために画家になる道をあきらめ、挿絵で9人の家族を養わなければならないという危機感からくる、挿絵にむかう真剣さを見て取れる。