「たけくらべ絵巻」の「紅入友禅」とは?

金沢・徳田秋声記念館での講演会「挿絵画家・木村荘八」が明日9日に迫った。講演会用に作った43枚の画像から「たけくらべ絵巻」の一部を紹介しよう。


 美登利と信如に恋心がうまれ、切れた鼻緒をすげ変える為の「紅入友禅」の切れ端を直接手渡せず、格子戸から放り投げる(写真中央上)。この紅入友禅を真っ赤な布として描いた荘八の挿絵は間違っているのではないか、との疑問を持ち、間違いを立証していく。
 写真中央下の鏑木清方:画『樋口一葉全集』第1巻別丁扉(新世社昭和17年1月)には、一葉の代表2作から、随筆「雨の夜」をイメージするバショウの葉と、周りに描かれた「たけくらべ」を象徴した模様が描かれている。
 この模様は、畳紙(たとう=結髪の道具や衣類などを包むための紙)の冴えたなんど色に真紅のもみじと小菊の模様のある小裂で、当時、一葉が書き進めていた『たけくらべ』の、美登利が信如に渡しかねた紅入友禅の思い入れでもある。
 あるいは画像右の、能で使われている「紅入鬘扇(いろいりかづらおうぎ)」の絵柄の一部に赤が使われているのが紅入ということであり、全面が赤ではなく、赤が一部に使われているという意味であることが理解できる。
 信如も雨の中に置き去りにしてしまった拾えなかった布を未練たらしく振返り、「紅入友仙の雨に濡れて、紅葉の形のうるわしきが…」(写真左下)と紅葉が印象的だったようで、紅葉が美しく映えるのは赤い布に描かれた紅葉ではなく、鏑木清方が描いた扉絵のような紅色のはいった友禅染なのではないだろうか。
 というように、43の話しを2時間かけて展開する。