電子書籍業界ってどんなものなのか、と思って山田順『出版大崩壊』(文藝春秋、2011年)、猪熊建夫『新聞・TVが消える日』(集英社、2009年)等を読んでみたが、何れも否定的で、紙の本がダメで電子出版がだめといわれるとお先真っ暗になる。


ましていわんや、電子書籍で売れているのは、電子コミックで、中でも成人用コミックといわれるいわゆるビニ本とかエロ本といわれるたぐいのものだという。活字中心の書籍をPDF等で電子書籍にしてもほとんど売れないという。


電子書籍元年」といわれた2011年の電子書籍の売り上げは、紙の本に遥かに及ばなかったようだ。期待されたベストセラー『もしも高校生の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」は、電子書籍は9万ダウンロードで、紙の本は180万部。蟹の本で100万部をとっぱした池上彰『伝える力』の電子書籍は2万ダウンロードと、さっぱり振るわない。


これ等の数字を参考にして、多くの書籍が1万部以下しかしか売れない紙の本では、数百ダウンロードしか期待できないことになる。


さらに、印刷・製本代や流通・販売経費がかからない電子出版は経費がかからないと思われるだろうが、アマゾン、アップルに30%支払わなければならず、ほかの電子書籍販売業者の場合は、50〜60%支払わなければならないらしく、紙の本と較べ決してコスト削減にはなっていないという。アップルの場合は登録料も支払わなければならない。


結局、もうかるのは執筆者ではなくプラットフォーム(アプリケーションソフトを動作させる際の基盤となるOSの種類や環境、設定などのこと)と、フォーマット制作代10万〜20万がかかるので、その制作会社だけがもうかるようだ。