堂昌一:画、多岐川恭「用心棒」(「週刊新潮」昭和52[1977~78]年)は、羊羹を思わせるような超縦長の挿絵を特徴としてシリーズ化している。堂51歳、人気急上昇中の時の作品で、妖艶な女性を描かせたら当代随一、気力体力ともに最も充実している時期の堂の代表的作品といえよう。



堂昌一:画、多岐川恭「用心棒」(「週刊新潮」1977~78年)



堂昌一:画、多岐川恭「用心棒」(「週刊新潮」1977~78年)


縦長の挿絵のシリーズは、岩田専太郎柴田錬三郎「どうでもいい事ばかり」(「夕刊フジ」昭和43年7月〜12月)で試みている。



岩田専太郎:画、柴田錬三郎「どうでもいい事ばかり」(「夕刊フジ」昭和43年7月〜12月)



岩田専太郎:画、柴田錬三郎「どうでもいい事ばかり」(「夕刊フジ」昭和43年7月〜12月)


縦長の絵は、江戸時代に描かれた柱絵にその原点を見る事が出来る。柱絵はアルフォンス・ミュシャの縦長のポスターにも影響を与えたといわれ、アール・ヌーボーに強く魅かれていた専太郎は、ミュシャの影響を受けて縦長の挿絵を描いたのではないかと推察する。さらに、その専太郎の絵の影響を受けた堂は、専太郎の絵よりも遥かに細長い絵に挑戦した。その絵は、巡り巡ってもとの柱絵の様な比率の絵に舞い戻っている。



アルフォンス・ミュシャ:画



アルフォンス・ミュシャ:画


柱絵については「kotobank」に下記のような説明がある。
「はしら‐え 〔‐ヱ〕【柱絵】
1 寺院などの柱に描かれた絵。
2 浮世絵版画、特に錦絵で、横12〜13センチ、縦約70センチの判型のもの。柱に掛けて装飾とする。鳥居清長などが多く描いた。柱隠し。」(kotobank > 柱絵とは)

湖竜斎:画、柱絵