「裏窓」(久保書店、昭和35年1月号)には、堂昌一の表紙装画だけではなく、藤見郁「白蝋荘事件」の小説挿絵が掲載されており、一粒で二度美味しいお得な感じがする。この挿絵は優れもので、私の好きな絵だ。コラージュ風の絵が絶対的にいいとは言えないが、時間の経過や複雑に錯綜するストーリー展開を一つの画面に表現するにはぴったりの表現技法といえる。日本の古い本にもこの技法は使われていた。挿絵画家の構成力が問われるのは画家にとっては手を抜けない仕事だが、読者にとっては楽しみな技法といえる。



堂昌一:画、藤見郁「白蝋荘事件」(「裏窓」久保書店昭和35年1月号)



堂昌一:画、藤見郁「白蝋荘事件」(「裏窓」久保書店昭和35年1月号)



堂昌一:画、藤見郁「白蝋荘事件」(「裏窓」久保書店昭和35年1月号)
昔の印刷や製本は、技術も管理も不十分だッたので、1枚の絵を2頁(見開き)にわたって印刷すると、右と左の水平がばらばらになってしまったり、必要以上に絵をトリミングしてしまったりで、元の1枚の絵に復元しようとしても出来ないことが多い。このような絵をみると、そんな不良品のような印刷物でも良しとしてしまう戦後間もない頃の印刷物に対する購読者のおおらかさは、ある意味ほっとさせられて嬉しくもあるような気分にさせれる。



堂昌一:画、藤見郁「白蝋荘事件」(「裏窓」久保書店昭和35年1月号)