日本出版美術家連盟理事・星恵美子先生から武部本一郎『SFアート傑作集1 火星の美女たち』(岩崎書店、1981年)が送られてきた。星先生の憧れのさし絵画家らしく、連盟の機関誌「粋美挿画」3号の「すばらしきJPALの先輩たち」の欄で、武部本一郎を取り上げてみませんか、というご提案のようだ。



武部本一郎『SFアート傑作集1 火星の美女たち』(岩崎書店、1981年)


浅学の私は、あいにく武部本一郎を全く知らずこの画集で初めて出会い、一気に魅せられてしまった。今日も E・R・バローズ『失われた大陸』、『火星の王女 (少年少女世界名作全集)』、『ターザンと黄金都』や、高木敏子ガラスのうさぎ』など、『SFアート傑作集1 火星の美女たち』に記載されていた〈作者紹介〉を参照にして代表的な装丁や絵本、画集などを10冊ほど注文してしまった。



武部本一郎「火星のチェス人間」(『SFアート傑作集1 火星の美女たち』岩崎書店、1981年)



武部本一郎「火星の大元帥カーター」(『SFアート傑作集1 火星の美女たち』岩崎書店、1981年)



武部本一郎「石器の世界ペルシダー」(『SFアート傑作集1 火星の美女たち』岩崎書店、1981年)



武部本一郎「火星の古代帝国」(『SFアート傑作集1 火星の美女たち』岩崎書店、1981年)


参考にした『SFアート傑作集1 火星の美女たち』の〈作者紹介〉はかなり詳しく書かれており、武部を知るには絶好の資料となったので、転載して紹介させてもらおう。


武部本一郎略歴
1914年大阪・船場に生まれる。父・武部白鳳は、幸野楳嶺門下の四条派の画家。甲陽中学校を終えて、はじめ日本画を、後に洋画を学ぶ、軍隊生活の後、1946年、第一回行動美術展へ「裏町」を出品、入選作となる。その後、同展の研究所賞、奨励賞を受賞、会友となる。このころ、京都新聞社賞、京展賞などを受ける。


1957年上京、児童美術の仕事をはじめる。1966年、第54回日本水彩画展に入選、’68年同奨励賞を受賞。確かな写実と奔放なイマジネーションとによって、装画・さし絵・絵本など児童出版美術界の第一線で活躍した。また、1965年ごろから、児童出版と並行して、SFアートを手がけ、この分野でも第一人者となる。


出版美術家連盟会員、児童出版美術家連盟会員、少年文芸作家クラブ会員。1980年7月17日没。享年66歳。生涯に手がけた単行本は絵本、挿画、SFなど、ほぼ1000点をこえるが、主な作品には次のようなものがある。


〈主な作品〉
児童書
少国民の偉人物語文庫」(表紙・岩崎書店・1958年)「ビルマの竪琴」(あかね書房・1959年)「宝島」(学習研究社、1968年)「かわいそうなゾウ」(絵本・金の星社1970年)「ありがとうチモシー」(あかね書房、1975年)「四年三組のはた」(偕成社、1975年)「ガラスのうさぎ」(金の星社、1977年)「アホウドリの島」(絵本・岩崎書店、1988年)「悲しみの砦」(岩崎書店、1977年)「キリストさま」(絵本・女子パウロ会、1979年)「山から声が降ってくる」(偕成社、1980年、絶筆)


SF
バローズ〈火星シリーズ〉(東京創元社、1965年)ハワード〈コナン・シリーズ〉(早川書房、1971年)べりヤーエフ「生きている首」(岩崎書店、1971年)ディクスン「宇宙の勝利者」(岩崎書店、1972年)ムーア「凍った宇宙」(岩崎書店、1973年)」
(「火星の星」岩崎書店、1981年、より転載)