『ふしぎなえ』1-3.小人を登場させる!
絵本は、タブローの絵とは異なり、何枚かの絵が集まって一つのストーリーを作り上げなければならない。
つまり、それぞれのページをめくるたびに、前後それぞれの絵が連結して繋がっていき、最終的に一つの世界を構築していなければならないのです。
『ふしぎなえ』では、1ページごとに違った位相の絵が描かれており、これらにいかに連続性を作り出すのか、それも文字のない、言葉の助けを受けない絵本で。
安野は、「小人を登場させることで、連続性を作り出せる」と考え、エンターテイメント性のあるキャラクターに、ふしぎなえを理解してもらうための手助け役の(狂言回し…物語の進行役)として小人を登場させた。
エッシャーの絵は、絵画なので、絵本のようなキャラクターを登場させる必要はなかったが、絵の構成が複雑なので、それを理解させるためにダンゴムシのような生物やロボットのような人物を登場させている。
安野が『ふしぎなえ』で登場させたのは、赤い帽子の小人たちでした。
安野が描いた小人は、何をヒントに描き出されたのだろうか? 『ふしぎなえ』が誕生する以前に刊行された絵本に登場する小人の格好を眺めてみよう。
小人は、日本刊行された昔噺の絵本などにもたくさん登場している。
安野が興味を持っていた、ヨーロッパには、それぞれの国に妖精と呼ばれる小人がいた。どれも安野の絵に登場する小人に似ているといえば似ているが、ノームやピクシーと呼ばれる妖精の姿形が、よく似ているように思える。
「はじめてであうすうがくのの絵本」に登場する赤い帽子の少年たちは、カリジェの『ウルスリのすず』に登場する少年ウルスリそっくりだ。」(芸術新潮、2021.9)とあるが、「初めて…」は1971年発行で『ウルスリのすず』より先に刊行されているので、「似ている」というのは、当たらないのではないかと思う。それに、安野の絵に登場する小人は少年ではない。