戦前にもあの「ヘッケルとジャッケル」(Heckel and Jeckel)のようなアメリカンコミック風のカラスの絵があったのだろうか。さっそく、手元にあった「日本童謡集」(『小学生全集』、文藝春秋社、興文社、昭和2年)から、カラスの絵を探してみた。



「かきとからす」(『小学生全集24巻 日本童謡集』、文藝春秋社、興文社、昭和2年
ベストを着て、結構粋なカラスだが、目が小さい。



「おいけのからす」(『小学生全集24巻 日本童謡集』、文藝春秋社、興文社、昭和2年
写実的で、擬人化された形跡もない。この頃はこのような具象的な挿絵が多い。



「きうくわんてう」(『小学生全集24巻 日本童謡集』、文藝春秋社、興文社、昭和2年
カラスかと思ったら、どうやら九官鳥のようだ。鳥綱スズメ目ムクドリ科に分類される鳥で、カラスとは縁がないようだ。
でもこの絵はかなり「ヘッケルとジャッケル」に近い。


ちなみに「日本にこの鳥が初めて来たのは江戸時代初期に中国から来たといわれ、そのときにこれを飼っていた九官という人物が「この鳥は自分(九官)の名前を言う」と言ったのを通訳が「この鳥は自分自身の名前を言う」のだと勘違いして、九官鳥となってしまったのが名前の由来といわれている。」(フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)



初山滋:画「ケンケンケムシ」(『小学生全集24巻 日本童謡集』、文藝春秋社、興文社、昭和2年
これは何の鳥なのかは分りませんが、鳥がだいぶ漫画化されてきているという意味で掲載してみた。「…ハッパ ノ カゲ ニ カクレテ モ、/オマヘ ヲ サガス トリ ガ ヰル。/トリ ノ オメメ ハ マアルイゾ。/ハアヤク ハアヤク テフ ト ナレ。」という詩に添えられた挿絵だ。具象的な挿絵が多い中で、この絵は飛び抜けてモダンだ。