装飾図案文字がキネマ文字と呼ばれるというなら、やはりその名が付けられた昭和初期の「キネマ旬報」を見なければ


ということで、早速
・「キネマ旬報」第359号(キネマ旬報社昭和6年3月、創刊=大正8年7月)
を購入。映画の掲載広告などを探してみたら、さすがにキネマ旬報ですね。「キネマ文字の宝石箱や〜。」ほんとオンパレードだ。「欧米か〜!」
大正8年に創刊したようだが、その頃の本からぜ〜んぶ眺めてみたいですね。いつごろからキネマ文字が使われ始めたのかが分かるかもしれませんね。


ありがたいことに1頁の全面広告や2頁の見開き広告がたくさん掲載されており、はっきりと文字を観察することができるのはうれしい〜。
以下、表紙1、表紙4、表紙3、そして本文中に掲載されていた広告の一部です。全部をお見せできないのが残念です。











昭和6年ということで、まさにキネマ文字全盛期だけあって、どのぺーじも装飾文字があふれている。この勢いでは、「装飾図案文字」が「キネマ文字」と呼ばれるのもやむを得ないことと納得した。


折り込みの広告もあるが、スキャンニングが大変なので1枚だけ掲載します。折り込み広告の文字はちょっと気力がこもっているように見える。



「脱線泥棒」「赤熱の抱擁」「愛する権利」「悪魔の仮面」等に顕著に見られるように、文字のバランスの中心を1/4くらい上方に置くのが一つの特徴になっているのが分かる。幼子の浴衣の帯の位置のようだ。


「戦争と貞操」「花嫁修業」に見られるコウモリの羽根のような省略もこの時代の特徴を表していて、これがあるだけでもう昭和モダンの文字になってしまうくらい強烈なシンボリックなサインだ。


掲載された映画はすべて洋画ですが、邦画の広告がないわけではない。ただキネマ文字に関してはなぜか洋画のほうが断然面白い。邦画はどことなく江戸・明治を引きずっているようなタイトルの作りをしているが、それも致し方ないといえば致し方ない。何といっても日本の話は、伝統的な日本風にするに限るからね。


たくさんのキネマ文字を見てわくわくしてくる人はそう沢山いるとは思えないが、図案文字フェチの私にはワクワクを通り越して、ドキドキの世界だ。映画のポスターを見て映画の内容には全く興味を示さず文字だけに興味を示すのは、「こいつちょっとかわり者」と思っている人もいるかもね、ね。