創元社版、横光利一『機械』初版のタイトル文字について

佐野繁次郎装丁「美術手帳」

佐野繁次郎装丁本コレクターを自負し、「本の手帳」2号で「装丁本蒐集の醍醐味─辻静雄著作の佐野繁次郎装幀本」を執筆してくれた西村義孝さんや、
やはり佐野繁次郎本にはめっぽう強く、ホームページ「佐野繁次郎の装幀」
http://www.geocities.jp/sumus_livres/sano.htm
を立ち上げている林哲夫さんは、
すでに所有しているとは思いますが、私は初めて眼にする佐野繁次郎装丁「美術手帳」(美術出版社、1958年)です。佐野は赤色が好きですよね。



林さんのHPには掲載されていないようなので、、ちょっと自慢です。


この林さんのHPには、創元社版『機械』の初版と再版では、タイトル文字が微妙に書き換えられていることを指摘している。
『機械』の再版は古書市でもなかなか見つけることはできない。もちろんネットなんかでは初版しかアップされていないので、再版本のほうが貴重だ。私もずっと探し続けているがまだ入手していない。


佐野繁次郎装丁、横光利一『機械』(創元社昭和10年初版)の題字について考えてみました。


初版のタイトル文字をじっと眺めていると、「機」の旁(つくり)の上の部分には、45度の傾斜をしっかりと定規で割り出して、まるで設計図面に添って細い金属の機械部品を斜めに配置して組み立てたかのように、機械のパーツを組み立てるような方法で文字を構築している。そう、手書きの文字というよりは、設計図を見ながら機械を組み立てるかのように構成されているのがよくわかる。



木偏や旁(つくり)を構成している水平の線も機械のパーツを組み立てるかのように同じような形のものが繰り返し使われている。
この文字は、単なる創作文字ではなく、平面上に組み立てられた機械といってもいい。


なぜこのような文字が作られたのか? これから数回にわたってそこを追求していこうと思っている。