2010-11-21 挿絵というものは本来非常にむずかしいものです。心内の幻想を描出するものですから、眼前のものを描くよりは一層むずかしいわけです。素描の力が充分にあって余程空想ゆたかな人でなければよい挿絵は描けません。而して文学を理解し人事百般の学問を通じていなければならない。こう考えて来ると挿絵という仕事は非常に恐ろしくなります。なまやさしいものではない。挿絵をやっていると自分の至らぬことが痛感され、勉強せずにはいられなくなるのです。」(『春陽会雑報』昭和6年4月第1号) 石井鶴三:画、「春陽会あかるくなる」(1931年『春陽会雑報』)