専太郎の博学ぶりが「浮世一代女」の主人公のイメージ作りに協力

「〈浮世一代女〉を書いた時、ひょっとしたらという望みをいただいて、岩田専太郎氏におねがいしたら、かなえられて、お宅へうかがった。岩田氏はゴルフのパターの練習をしながら、待ち受けられ、実をいうと、ぼくは、まだ小説の構想など何もなかったのだ。本牧のチャブ屋を舞台にすることだけ判っていたから、聞きかじりの、そのあれこれ口にするうち、氏は一膝のり出されて、大正から昭和初期にかけての、チャブ屋風俗を詳しく説明下さり、おかげで主人公の面影がくっきり浮び、焦点がさだまったのだ。」(野坂昭如「自己主張するさし画」、「アサヒグラフ」1974年)と、挿絵画家は、えてして物知りだ。