2010-06-07から1日間の記事一覧

専太郎の博学ぶりが「浮世一代女」の主人公のイメージ作りに協力

「〈浮世一代女〉を書いた時、ひょっとしたらという望みをいただいて、岩田専太郎氏におねがいしたら、かなえられて、お宅へうかがった。岩田氏はゴルフのパターの練習をしながら、待ち受けられ、実をいうと、ぼくは、まだ小説の構想など何もなかったのだ。…

岩田専太郎を画風を端的に言葉にすると「浮世絵の伝統を基盤にしながらも、時代に流行を敏感にとらえ、つぎつぎの画風を変化させていった」(松本品子、弥生美術館編『さし絵画壇の奇才岩田専太郎』河出書房新書、2006年)と、いえるだろう。時代小説と女だけではなく、現代小説、探偵小説など、どんなジャンルのものでも作風にマッチした新しい感覚の風を吹き込んでいった。

チャブ屋*の世界では名の通ったメリケンおこまの淫蕩無頼の生涯を描いた、野坂昭如『浮世一代女』(新潮社、昭和48年)の表紙絵は、ちょっと見、専太郎の絵とは判りにくい。そのくらい大胆に画風を変えることができるのが、専太郎だともいうことができる。(…