日本画家・平福百穂の装丁……4

■架蔵書で作る平福百穂装丁書誌一覧……4

(※ ●印は前回の書誌一覧に新規追加したもの)




上記の写真は、写真上、土屋文明『ふゆくさ』(古今書院昭和9年4版、初版大正14年2月)と、写真下、村上成之『翠微』(古今書院大正14年9月)で、この2点の装丁制作に関するエピソードが季刊『銀花』第32号(文化出版局、1977年)に掲載されているので一部転載して紹介しよう。土屋文明平福百穂のことども」には、歌人としての百穂を紹介しながらアララギ同人の歌集の装丁についても、次のように記載している。


「私の処女歌集『ふゆくさ』も先生の装幀である。最初は笹を描いた原畫を下さったのだが、二、三日するともつとふさわしいのができたからといって連絡をくださつた。當時、先生が静養に入らしてゐた房州の富津まで出かけていくと、當地で写生された葦の絵を下さった。そちらを『ふゆくさ』に使ひ、笹の絵の方は、村上成之先生の『翠微』の装幀に使はせていただいた。」
と、ちょっと嬉しそうに、自慢気に書いているのがほほ笑ましい感じがするが、とても貴重な装幀のエピソードなので、この2冊を何とか探し出したくなり、やっと手に入れることができた。これって、私の蔵書自慢ですね。


さらに続けてお気に入りの百穂装幀本を紹介している。
アララギ叢書の中で、私が先生の装幀の傑作だと思ふのは、『左千夫全集』、長塚節の『土』、島木赤彦の『柿蔭集』あたりだと思ふ。『左千夫全集』の、ねむの花を一面に描いた様は、まさに装幀とはこのことなりといった観があらう。」と、これはかなり恣意的なランク付けなので不満は残るが、土屋文明が絶賛する伊東左千夫『左千夫歌集第一巻』(春陽堂大正9年)の写真も掲載しよう。この作品は私も納得だ。



架蔵書に百穂装丁本は、もうないだろうと思っていたが、本棚の奥から数冊出てきたので追加します。

・「新国民」挿絵(東京国民書院、明治38年
・「斯民」第参編第拾四号(報徳会明治42年
・「婦人之友」(婦人之友社大正6年
・伊東左千夫『左千夫歌集第一巻』(春陽堂大正9年
・中村憲吉『しらがみ』(岩波書店大正14年、初版大正13年
・土田耕平『青杉』(古今書院大正14年、初版大正11年
・島木赤彦『柿蔭集』(岩波書店昭和3年、初版大正15年)
・島木赤彦『太虚集』(古今書院大正13年
新村出『南蛮広記』(岩波書店大正14年
土屋文明『ふゆくさ』(古今書院昭和9年4版、初版大正14年2月)

・村上成之『翠微』(古今書院大正14年9月)
平福百穂『寒竹』(古今書院昭和2年
・「ホトトギス」(ほととぎす発行所、昭和3年
・藤澤古實『国原』(岩波書店、昭和4年2版、初版昭和2年
羽仁もと子羽仁もと子著作集第八巻』(婦人の友社、昭和2年
・九条武子『歌集薫染』(実業之日本社昭和3年
・『漫画大正昭和史』口絵(中央美術社、昭和3年
羽仁もと子羽仁もと子著作集第十巻』(婦人の友社、昭和3年
羽仁もと子羽仁もと子著作集第十一巻』(婦人の友社、昭和3年
羽仁もと子羽仁もと子著作集第一巻』(婦人の友社、昭和4年

・結城哀草果『山麓』(岩波書店昭和4年
・高田浪吉『川波』(古今書院昭和4年
・「婦人の友」(婦人の友社、昭和4年
長塚節長塚節全集』第参巻(春陽堂、昭和4年)
・松岡貞総『山彦』(常春社、昭和4年)
葛西善蔵葛西善蔵全集』第四巻(改造社昭和4年
・今井邦子『紫草』(岩波書店昭和6年
・中村憲吉『軽雷集』(古今書院昭和6年
・栗原元吉編『下田歌子著作集 香雲叢書第2巻』(実践女学校出版部、昭和7年
羽仁もと子羽仁もと子著作集』第17巻(婦人之友社昭和8年

・土田耕平『斑雪』(古今書院昭和8年
・岡麓『朝雲』(岩波書店昭和11年
・岡麓『庭苔』(古今書院昭和11年、初版大正15年)
・「アララギ」第45巻第7号(アララギ発行所、昭和27年)
・「アララギ」第45巻第12号(アララギ発行所、昭和27年)
・「アララギ 平福百穂追悼号」(アララギ発行所、昭和9年
・中山正三郎編『長塚節遺稿』(小山書店、昭和17年
羽仁もと子羽仁もと子著作集』第18巻(婦人之友社、昭和46年5版、初版=昭和25年)
羽仁もと子羽仁もと子著作集』第16巻(婦人之友社、昭和47年5版、初版=昭和7年
羽仁もと子羽仁もと子著作集』第20巻(婦人之友社、昭和55年)

羽仁もと子羽仁もと子著作集』第2巻(婦人之友社、昭和57年19版、初版=昭和2年