2009-12-12から1日間の記事一覧

伊上凡骨は、与謝野晶子『小扇』(金尾文淵堂、明治34年)、与謝野鉄幹・晶子『毒草』(本郷書院、明治37年)などで、彫師としてだけではなく、新たな版画の技法を創出して歴史に名を残す事になった。彫師の立場からの表現の可能性を追い求めた。具体的にいうと、藤島武二が描いた原画のもつパステル等のタッチを木版画でそのままに再現しようとしたのである。つまり、彫版の技法そのものが美術としての版画を創出できると考えていた。彫りの技法を高める事による、絵師、彫師、摺師の共同制作になる複製物制作という伝統的な木版画から、美術と

藤島武二:装丁、与謝野鉄幹・与謝野晶子『毒草』(本郷書院、明治37年) 刺激的なタイトルからは、二人の思い入れの程がうかがえる。読を振り撒く本というような意味合いがあるのだろうか。 朝鮮朝顔、毒茸、浦島草などの毒を含む植物を配している。チョウ…

先週、高円寺の古書市で購入してきた本の第3冊目はこれ。岸田劉生:装丁、武者小路実篤『第二の母』(聚英閣、大正8年)古書価800円。岸田劉生の装丁も好きなのだが、伊上凡骨彫刀とあるのが気になって購入してしまった。伊上凡骨は木版画の彫師だが、気骨のある彫師で、「伊上凡骨(いがみ ぼんこつ)1875‐1933明治-昭和時代前期の木版彫師。明治8年5月21日生まれ。24年に上京、初代大倉半兵衛に木版彫刻を学ぶ。33年「明星」の挿絵で注目される。水彩画や素描の質感を木版でたくみに表現した。「光風」の口絵、竹久夢二の

岸田劉生:装丁、武者小路実篤『第二の母』(聚英閣、大正8年)

平福百穂の装丁本を久しぶりに購入した。森川汀川『歌集 峠道』(古今書院、昭和7年)古書価300円(函付き)がその本。古今書院の「アララギ叢書」の第1篇「馬鈴薯の花」から「山下水」まで230篇が全部百穂の装丁かどうかを確かめてはいないが、このシリーズだけでも百穂の装丁本はかなりの数にのぼるものと思われる。架蔵書も100冊くらいはあるかも知れないので、百穂の話しにも挑戦して見たい。

森川汀川『歌集 峠道』(古今書院、昭和7年) 「平福百穂(ひらふく ひゃくすい)1877(明治10)年-1933(昭和8)年10月30日)は日本画家。画家・平福穂庵の四男として、秋田県角館(仙北市)に生まれた。本名は貞蔵。 幼い時から地元の豪商那波家のコレクシ…

アール・デコ風あるいは前衛美術風の装丁に見つめられるとつい「♪おじさん私をお家へつれてって〜♪」というメロディが頭の中を駆け巡り、気がつくと購入していることが多い。斎藤薫雄、梯一郎『児童陸上競技の指導と実際』(厚生閣、昭和4年)もそんな風にしてわが家の書棚に並んだ。しかし、問題がある。装丁家名がどこにも記されていないことだ。

タイトルの創作図案文字が何とも言えなくいいですね。ちょうどこの頃に、このタイトルのようなキネマ文字と呼ばれる映画のタイトルが盛んに使われていた。印刷物もキネマに負けじと創作図案文字の題字を作り出していたんですね。というより、創作図案文字の…