ムラサキシキブの名は「むらさきしきみ」の訛り?

源氏物語』の作者と考えられている紫式部は、平安時代中期の女性作家・歌人だが、紫色の実が敷き詰められたように付くムラサキシキブの名は「むらさきしきみ(紫敷き実)」や紫色の実が茂る「むらさきしげみ(紫茂実)」が訛り、昔の才女の名を借りた語呂合わせのように、いつの間にかそう呼ばれるようになったようだ。もっぱら、この小粒の果実は、眺めて愛でるためだけに栽培されているが……無粋な私には口に入らない実を眺めているだけなんて……です。



 なお紫式部の本名は不明で「紫」は『源氏物語』の作中人物「紫の上」に、そして「式部」は父為時の官位(式部省の官僚・式部大丞だったこと)に由来するペンネームだ。写真は「紫式部」(菊池容斎前賢故実』より)


この季節になると町中のキンモクセイが一斉に咲き、自転車に乗って何処まで行ってもキンモクセイの香りがしてきて楽しくなる♪ 小さいオレンジ色の花を無数に咲かせ、芳香を放つキンモクセイは、春先に咲く沈丁花と並んで香の女王さまだ。イチョウがそうであるように雌雄異株といって雄の木と雌の木があるらしく、日本では雄株しか入っていないので結実しないという。確かにキンモクセイの実は見たことがない。ムラサキシキブは実を眺めさせるだけ、キンモクセイは香を楽しませるだけのスペシャリストなのか。美しい花と美味しい果物で2度楽しませる、という二足のわらじを履くのは自然界でも難しいのか……。